深夜。 部屋に戻ったセレナは、ふと、風が変わったことに気づいた。 まるで、何かが近づいてくるような、そんな気配。 窓を開けると、月の光に照らされた中庭が見えた。 その中心に――“それ”はいた。 銀と蒼の入り混じった毛並み。 まるで霧のようにゆらめく尾。 人ではない、けれど神でもない。気高く、美しく、恐ろしいほど静かな存在。 神獣・アグレイス。 セレナは息をのんだ。 けれど、不思議と恐怖は感じなかった。 神獣の瞳が、まっすぐにこちらを見ていたから。 (……私を、見ている?)