「ごめんね。ずっと直接お礼言いたいって思っていたのに、こんなに遅くなって」
「いいんだよ、いっちゃんが今、元気ならさ」
本心からの言葉なのに、後悔が顔に浮かんでいるいっちゃんは、首を横に振る。
「僕は、お礼を言いたいって思っていたのに、寧色ちゃんが転入して来て、寧色ちゃんだって分かったのに、寧色ちゃんが僕のこと覚えてなさそうだったから、すぐにありがとうって言えなかった」
「気にしないで。気づかなかったわたしが悪いんだから」
「それは、確かに寂しかったけど、いいんだ。今日、パーティーだからって、やっと声をかけれたんだ。やっぱり、ちょっと遅れちゃったけど」
「声をかけてくれてありがとう。わたし、いっちゃんにまた会えて嬉しいよ」
いっちゃんは笑うが、涙を堪えているようにも見える。
いっちゃん、普段はミステリアスで通っているんだよね。
なら、こんな顔知っているのもわたしだけかな。
こぼれ落ちそうな涙に手を伸ばそうとして、その前に差し出された。
「寧色ちゃん。よければ、僕と踊ってくれない」
「わたし、踊り方なんにも知らないよ」
「いいよ。僕がリードするから」
優しく微笑むいっちゃんの、昔より大きくなっている、それでも変わらず白い、その手をとろうとして、
「おい」
声をかけられて、思わずそっちを向く。
やっぱり、周様だ。
周様は、こっちに向かって歩いてきている。
「彼とは踊った?」
いっちゃんに尋ねられ、首を横にふる。
「ううん、まだ」
「じゃあ、僕は先が良くないね」
そうして、身を引こうとした、いっちゃんの手を掴む。
「また後で、踊ろうね」
「うん」
いっちゃんは、嬉しそうに笑った。



