有希さんに案内され、中央ロビーに向う。
柚子の館は、中央と呼ばれる共有部分と、男性用の東側、女性用の西棟があるらしい。
玄関に繋がる中央ロビーは、使用人の為の館なのに、ホテルのように綺麗だった。
きょろきょろしちゃうわたしを、待っていた執事長はジッと見ていた。
良い子にしてなきゃだ。
「着替え終わったようですね。有希、説明はしましたか?」
「最低限だけしましたが、本当に最低限です。今日一日は、休息もかねて、ゆっくり説明するのが良いかと」
有希さんの言葉に、執事長は目を伏せる。
「確かに本来なら、説明をゆっくり行い、メイドとしての教育もみっちり行うべきでしょう。ですが、月曜日には周様の通う、国蘭双学学園に転入する事になっています。ですので、今から教育を行います。良いですね、安藤」
執事長のわたしを見る目は迫力あって、緊張で息をのむ。
でも、曾お爺さまに頑張るって言ったし、周様にも守るって宣言したんだ。
全ては、私の持つ超能力を誰かのために使うため!
「頑張ります!」
「その意気です。それじゃあ、まずは挨拶の仕方から」
「ふー、疲れた」
夜、ヘトヘトでベッドに倒れこむ。
執事長は最低限って言ってたけど、めっちゃ疲れた!
お辞儀の仕方から、立ち振る舞い、言葉遣い、接客の仕方、お茶の入れ方、屋敷の配線の確認、何十人もいる屋敷で働く使用人の紹介。
言葉にすると少ないけど、出来るまで完璧にやらされたし、覚えるまで完璧に暗記させられた。
ご飯が美味しかったのと、大浴場が気持ちよかったから良かったけど、そうじゃなきゃ心が折れちゃう所だった。
部屋に戻ってきたのもさっきだから、荷ほどき何にもしてないから、やらなきゃ。
あっ、そうだ。
有希さんに今日中にファイル確認しといてって言われてた。
明日は、明日で仕事あるみたいだし、やるかぁ。
動く元気はないので、寝転がったまま赤いファイルに目をやる。
動いて欲しいなぁ。
そう願うと、赤いファィルはふわふわと浮き上がり、私の元までやってきた。
楽するために使わないよう言っていたマザーにバレたら、怒られちゃうだろうな。
でも、これが楽だからつい使ってしまう。
一人部屋で良かった。
人がいたら、こんな事できないし。
館の事が書かれたファイルを、寝転がりながら確認する。
明日は、お庭にお散歩行って見たいなぁ。
そうして、わたしのお屋敷に来ての一日目が終わった。



