目が覚めると、知らない天井だった。

今日、二回目だな。


「起きた? 良かった」


声を見ると、律果くんが覗き込んできていて、近くには周様も座っている。


「律果くん、周様」


白く清潔なここは、病院の個室のかな? 

でも、それにしては広そうだ。


「警察が来て助けられたけど、寧色は気失ってたんだよ。頭の方は検査してたけど、大丈夫だって。背中も手当してもらってたよ」

「なるほど、律果くんと周様は怪我してない?」

「してない。オレも周様も、傷一つ無いよ」


ひらひらと手を振って見せてくれる。

そこには、包帯も、湿布も、絆創膏の一つだってない。


あんなに大暴れしてたのに、強いんだな、ほんとに。


「それなら、良かった」


安心すると、微笑んでしまいそうになるけど、そうはいかない。


体を起こそうとして、


「まだ、横になってなよ」


と、律果くんに止められる。


「少しだけだから」


わたしは、体を起こすと、周様に向かって頭を下げた。


「申し訳ございません、周様。守るって言ってたのに、守れなくて」


結果的にサイコキネシスは使って助かっていたけど、その前にナイフを向けられるような状況にも、そもそも誘拐されるような状況にも、わたしはしちゃいけなかった。


だから、謝る。


「キミが謝ることなど、何もない。俺の方こそ悪かった」


周様は、しっかりと頭を下げていた。


「俺のせいで、キミも危険に巻き込んだ」

「大丈夫ですよ。気にしないでください」


自分も誘拐されるとは思わなかったけど、でも別にそんなことはいいんだ。


「周様が一人で怖い思いをしなくて」


わたしの言葉に周様はむっとした。


「俺は、誘拐は怖くない」


慣れているから、そんな言葉を言えるんだな。


そんなの、悲しい。


今日、わたしが感じた恐怖。


それは、サイコキネシスを使えなくなった事に端を発しているけど、それでま誘拐犯が来た時は怖かった。


だけど、周様は、もうそれに慣れてしまっているんだ。


守んなきゃ。

誘拐の慣れを忘れさせるために。


そのためには、サイコキネシスの特訓もしなきゃね。