「おーおー、格好いいこといっちゃってるね」
ガチャン! と重い音を立てて、ドアが開いた音と共に、そんな声がわたし達にかけられた。
涙に濡れた先に、何人かの人が入ってきたのが分かる。
たぶん、誘拐犯だ。
いつもだったら、怖くない。
でも、サイコキネシスという、誰にだって、何人にだって勝てる力を持っていない今は、怖い。
思わず身をすくめてしまう。
「わざわざ、連れてきたかいがあった!」
誘拐犯達のリーダーっぽい人が、ズカズカと大きな音を立てて近づくと、わたしの背中を思い切り踏んだ。
「ぎゃ!」
そして、重く固い靴で、ぐりぐりとされるのだが、めちゃくちゃ痛い。
「おい、何をする!」
「大事にしているみたいだなぁ」
リーダーはニヤニヤと馬鹿にした表情で言う。
……わたし、周様への嫌がらせのために連れてこられたんだ。
「まぁ、お前は、家に大事にされてないみたいだけどな!」
犯人の言葉に、周様は目を見開く。
「だって、そうだろ? まだ、お前の家から金は送られてないんだよ。跡取り息子だったのに、必要にされてないんだな」
周様は、ショックを受けたように顔を歪めると、ぐっと唇を噛み締める。
周様。
わたしがサイコキネシスを使えれば、こいつら全員、ふっとばすのに。
なんで、なんで、使えないの⁉︎
悔しくて、わたしも唇を噛む。
「金にならねぇ男だな、オマエ」
背中への、ぐりぐりは止まらない。
でも、痛さより、周様を傷つけようという意志を持って言葉にするリーダーに怒りが勝っていた。
こいつを、こいつを吹っ飛ばせ!
サイコキネシスを望むが、何故だか使えない。
それが、悔しくて仕方ない時、外から音が聞こえた。
「おい、待て!」
そんな声と、走っている音。
その音は近づいてきているのか、だんだん騒がしくなっていく。
「なんだ?」
上の人が振り向いたかと思ったら、その人の顔に足が飛んでいた。



