律果くんは、すました顔でクッキーを食べている。


ずっと、使用人お休み続けるのかな。

わたしのわがままだけど、律果くんと一緒がいい。

……また一緒に仕事するには、律果くんの思っていること知らなきゃいけないよね。


「律果くん、昨日なんであんなに周様の提案を嫌がったか聞いていい?」


律果くんは、わたしを見る。


「行く気が無い場所に強引に行かせられそうなのが嫌なのは分る。でも、あんなに怒る? 態度に出すんだって思って」


昨日は、驚いた。


「あー」


クッキーを一つ持っていた律果くんは、クッキーを持ったまま口に運ぶことなく、黙る。


やっぱ、聞かない方が良かったかな。


ちょっと後悔しながら見ていると、律果くんは持っていたクッキーを食べる。

そして、話してくれた。


「俺の家って、代々宮条家の執事なんだよ。父さんも、祖父さんも、その上も、先祖代々ね」

「うん」

「オレは、周様と同い年だし、生まれた時から執事をするのは決まってた。それはいいんだよ、そういうもんだって思っている。周様が金持ちの家に生まれて金持ちで有る様に、オレも執事の家に生まれて、執事であるって」


不思議な話だな。

生まれた時から、生きる道が、やるべきことが決まっているなんて。


「だから、親の庇護下に居る今、執事なのはいい。だけど、将来の事とか、心の中までは決められたくないんだよ」

「うん」


周様は、律果くんの気持ちは考えてない行動を取ろうとしていた。

それだから、律果くんは怒った。

分かりやすい話だ。


「ありがとう、話してくれて」

「いーよ。周様、オレが居なくて困ってた?」

「わたしじゃ物足りなそうだとは思っていたけど、困ってたかまでは分らなかったな」


律果くんは、笑った。


「周様、表情出ないもんね」

「でも、わたしは律果くん居なくて困ったよ」


まっすぐ目を見て伝えると、笑っていた律果くんは驚き、ため息をついた。

だけど、その表情は優しかった。


「しょうがないな。明日は、また寧色の先輩執事になってあげるよ」

「ありがとう律果くん!」


明日、二人が仲直り出来ると良いな。

周様は何を思って、あんな事を言ったんだろう。

明日は、それを聴きたいな。