「お疲れ、今日一日、どうだった?」
本日の使用人業務を終えて、へとへとになって柚子の館に戻ると、ロビーに律果くんがいた。
「律果くんだぁ」
「頑張った? なら、これあげるよ」
渡されたタッパーを開けると、クッキーが詰まっていた。
「勉強の間に焼いたの」
とってもいい匂いで、見た目は可愛く仕上がっている。
夜ご飯はもう食べたけど、食べたい!
「頑張ったのでください!」
「頑張った内容を話してよ」
律果くんの反対側に、私は座る。
律果くんが入れてくれた紅茶は、わたしのと違ってとっても美味しい。
クッキーをちらちら見てたのがバレたのか、話す前に「食べて良いよ」と言われたので、食べながら話す。
「大きな問題は起こしてないと思うよ。たぶん」
呆れられたり、嫌な顔をされることはあっても怒られる事は無かった。
「でも、試験の為の勉強もあるし、律果くんくらい完璧な使用人を求められるから、わたしには難しいのがよくわかった」
勉強と使用人業務、どちらもうまくやれてなかった。
「勉強は、教えてもらったんだろう?」
「教えてもらったけど、一回でもの凄く詰め込まれたし、すごいスパルタだったの」
こんなことも出来ないのかと、あり得ない物を見る目でみるし、ため息疲れるし、泣き言許されないし。
心には良くない教え方だ。
「わたしとしては、明日にでも律果くんに戻って来て欲しいです!」
「嫌だけど」
うーん、駄目か。
予想はしていたけど、ピシャリと断られる。



