「いい? 寧色ちゃん。ここが貴女の部屋。鍵は三つあって、敷地と、柚子の館と、この部屋。どれも無くしちゃ駄目よ」
「はい。ありがとうございます」
執事長の娘で、自身もまた宮条家のメイドである有希さんが、わたしの自室へと案内してくれた。
ぴっしりとした執事長とは違って柔らかい雰囲気の人で、年も執事長と離れている二十代っぽいから、お姉さんって感じだ。
有希さんが部屋の鍵を開け、中に入れてくれる。
部屋の大きさは、田舎に住んで居たときと変わらないくらいで、六畳くらい。
でも、畳じゃ無くてフローリングだし、ベッドが置いてある。
「先に送られてきた荷物は、部屋の中に置いて有るから確認してね。あと、この館や部屋に関しての事は、このファイルにまとめてあるから、今日中に目を通しておいて。分らない事有ったら、なんでも聞いていいから」
「はい」
有希さんが机に置いた赤色のファイルを見る。
結構、分厚い。
今日中に読めるかな?
「ここの備え付けの家具は全部備品なんだけど、これもそう」
有希さんは、クローゼットを開けて一着の服を取り出した。
それは、黒いワンピースと白いエプロンの、有希さんが今着ているのと同じ服。
「メイド服!」
「そう。これを着て、寧色ちゃんにはお仕事をしてもらうの。サイズは合っていると思うけど、一応確認してもらって良いかな? 着方が描かれた紙は用意してあるけど、一人で着れる?」
「大丈夫だと思います!」
「じゃあ、お着替えお願い。部屋の前で待っているね」
「はい!」
有希さんが部屋を出て行ったので、着替えるためにカーテンを閉めに窓に近寄る。
「わぁ」
お庭、とっても綺麗。
宮条家の広い敷地がよく見えるけど、木は綺麗な形に整えられていて、お花もいっぱい咲いていて、近くでみたいな……って、違う違う。
今は待っててもらっているんだから、着替えなきゃ。



