(あまね)様」


振り向き顔を見た執事長が頭を下げるので、わたしもそちらを向いて頭を下げた。

……一瞬しか見えなかったけど、イケメンぽかったかも。


「頭を上げていい。キミが俺のメイドか?」


執事長が頭を上げたみたいなので、わたしも上げる。

そこに居た男の子を見て、一瞬見たのが間違いじゃ無かったと確信した。


……イケメンだ。

わたしより、ちょっと年上かな。
でも、まだ男の子って感じのその人は、テレビで見る芸能人よりも遥かに顔が整っている。


「はい。彼女が、今日来たメイドの安藤寧色です。安藤、こちらの方が、貴女が仕える宮条家の坊ちゃま、周様です。ご隠居さまのひ孫にあたる方ですよ」


この人が、わたしの仕える人?

こんなイケメンなんだ……。
曾お爺様から同い年の男の人だとは聞いていたけど、その美しい容姿に見惚れてしまう。


「安藤、挨拶を」

「あっ、はい。安藤寧色です。えっと、絶対守るので、よろしくお願いします!」


慌てて挨拶をして頭を下げると、クスクスと笑う声が聞こえてきた。


うん、気のせいかな?

不思議に思って、ゆっくりと頭を上げると、周様は口の端をあげ、確かに笑っていた。


「俺を守るのか。その細腕で?」

「はい!」

「そうか、せいぜい頑張ってくれ」


周様の期待の言葉に、わたしは元気な返事を返せなかった。

だって、わたしを見る目には、優しさを感じさせない冷たい目だったから……。


何か気を悪くさせちゃったのかな。


何か言った方が良いのかと思ったけど、その前に周様は、柚子の館の前から離れていく。

執事長が頭を下げたので、わたしも下げる。


……周様、外から来て外に行ったけど、わざわざ挨拶しに来たの?