「安藤」
「はい」
廊下に出た瞬間、周様に名前を呼ばれた。
その声は、聞いただけで凍えるくらい冷たい。
「そんなにパーティーに出たかったか?」
「いえ」
「それなら、何故?」
まっすぐとわたしを見る目も、凍えるくらいに冷たくて、突き刺してくるようだった。
「一組の御影くんに会いたくて」
「何故、御影に?」
周様に直接聞かれてしまっては、答えるしかない。
バレたくなかったんだけどなぁ。
「実は昨日、何人かの女子に、周様のメイドをやめるように言われた時に、助けていただきました」
周様のメイドだってのに、転入初日でこんな状態になったとは恥ずかしい。
周様の役に立ちたいって思っていたのに。
迷惑をかけるなって言われてたのに。
どんな反応をされるかと思ったら、周様は深くため息をつく。
「そういった事が起きたら、すぐに報告しろ」
「はい。すみませんでした」
「それで何故、御影に会いたくて、オーディションに出た?」
「お金持ちの人が主催すると聞いたので、審査員側でいるかなって」
周様はまた、ため息をつく。
やばいやばい、すごく呆れさせちゃっている。
「廊下で待っていようと思ったら、中に案内されて、出ることになっていました」
「会いたいやつがいるなら取り繕ってやる。余計な事をするな」
「はい。すみませんでした」
わたしも、また頭を下げる。
オーディションに出ても会えなかったから、ほんと余計なことだったんだよな。
「次、絡まれたら、すぐに報告をしろ」
「了解しました。この度は、助かりました。ありがとうございました」
「帰るぞ」
背を向けた周様に、声をかける。
「あの、周様はなんで来てくださったんですか?」
「草薙から聞いた」
貴子さんから……、貴子さんは、はなびから聞いたんだろう。
「そうじゃなくて、なんでわたしの事、サポート? 手助け、してくれたのかなって」
「俺の使用人の行動で、俺の名前に傷がつく可能性があるからだ」
冷たい言葉に聞こえるかもしれないけど、それでも本当に手助けをしてくれた優しさが周様には有る。
「とても、かっこよかったです」
周様は呆れたようにため息をつく。
「俺がかっこいいのは当然だ」



