メイドさんは、守りたい!


国蘭双学学園には、変わった授業がいくつかあって、その一つが、格闘術だ。

使用人だけが受けられる授業で、ご主人や自分の身を守るために男女合同で習う。

格闘術といっても、一年生は柔道らしいけど、わたしは、柔道も習った事ないので真面目に授業を受ける。

サイコキネシスは使えるけど、サイコキネシスを人に使うのは難しいのだ。


「安藤さん、組み手しようよ」

「え……、わたし初心者だから」


授業の最初に受け身や技の練習をしたのだが、それが終わるとすぐに男女数人が来て、いきなりそんな事を言われた。

これからは、実践形式で練習するグループと、続けて受け身や技の練習をするのに別れる。

わたしは、続けて受け身や技を練習する方に行こうと思っていたのに。


「いいから、いいから、実践形式の方が練習になるよ」


そう声をかけてくる人は、同い年だけど男子だし、身長高いし、筋肉もあって、ぜったい無理。

今日は、お弁当落としてないんだけどな。


色々目を付けられてしまっているみたいだ。


「周様のメイドなんだろ?」


強引に腕を引っ張られる。


「やめてください、痛いです」


抵抗しようとするが、力は敵わないし、

「ほら、行きなよ」

って、背中を押されて踏ん張っていた足が出る。


どうしよう。

サイコキネシスは、こんな人がいる所で使えないし……


わたしの腕を掴む腕を、誰かが掴んだ。


「そんなに相手が欲しいなら、オレがしてやるよ」

「律果くん!」


律果くんは、鋭い目つきで腕を掴んでいた。

わたしを掴んでいた手が離れる。


「おい!」

「ほら、来いよ」
 

怒鳴られるが腕を掴んだまま、道場の中心へ連れて行く。 

あの男の人と共に囲んできた人は、まだわたしの側にいて困惑している。


大丈夫かな。

律果くんとあの人は、身長も体つきも全然違う。


先生に話したのか、試合が始まる。


どうなるんだろう。


不安だった勝負は、一瞬で決着がついた。

律果くんは、相手の襟組を掴むと投げて、押さえ込んだのだ。

押さえ込まれた相手の人は、体重差がありそうだけど、全然動けていない。


すごい、格好いい!


決着が付き、両者立って礼をした後、律果くんが戻ってくる。


「で、まだオレと組み手したいやついるの?」

「ああ、いや」


囲んできた人達は、未だ鋭い目の律果くんから目を逸らして逃げていく。


「律果くん、すごい! 格好よかったよ」


パチリと瞬きした後、恥ずかしそうにいう。


「まぁ、こればっかは特技って言えるほど、教えられたからね」

「それでも、あんな身長差も、筋肉差もあったのに」

「筋肉差ってなんだよ。まぁ、大事なのは見せるだけの筋肉じゃないってこと」


よくみると、律果くんも筋肉があるかも。


「寧色舐められているみたいだけどさ」

「はい、ごめんなさい」


そのせいでこんな事になって。


申し訳なさで身を縮こませるけど、律果くんは笑っている。


「謝んなくていいよ。同じ周様の使用人なんだから、また絡まれたり困った事があったら言えよ」

「うん。ありがとう」