登校する準備を終えて、柚子の館の中央棟ロビーに行くと、律果くんがソファに座って待っていた。
「おはよう、律果くん。待たせちゃった?」
律果くんは眠そうな顔を見せる。
「おはよ。まだ時間じゃねーし、大丈夫。忘れもんない?」
「たぶん大丈夫」
「たぶんじゃ心配なんだけど、まぁいいや。寧色、制服いいじゃん」
白いシャツ、茶色のブレザー、臙脂色のスカート、ピンクと灰色のストライプのリボン、黒色の靴下、ピカピカのローファー。
前の学校のセーラー服に白い靴下とスニーカーとは違う、お嬢様感のある格好。
わたしは、前の方が似合ってたと思ってたけど、褒めてくれて嬉しい。
「ありがとう。わたしもお嬢様に見える?」
今日から通う、国蘭双学学園が、東京の伝統ある私立のお金持ち学園だと知って聞いてみた。
「見えない」
それは、残念。
でも、いいや。
ニュースで名前を聞く様な学校の、中等部に転入するなんて、ドキドキしてるから。
「先に注意しておくけど、双学には同い年の使用人も通わせるくらいの金持ちが沢山通っているの」
「うん」
それは知っている。
わたしも、使用人として通うことになるし。
「大事なのはこっから。表向きは、大人の介入がない学ぶための場とか言われているけど、子供同士のトラブルで家に影響が出る事もあるから、宮条家に迷惑をかけるようなことするなよ」
そう言われると、ちょっと怖い。
「分かった。気をつける」
返事をしたのに、心配そうにわたしを見る。
「ホント、超能力は気をつけろよ」



