わたしは生まれつき、手で触れなくても物を動かす事が出来た。

思うだけで、ふわふわと物を浮かせて動かせる。
これは、念力や、サイコキネシス、テレキネシス呼ばれるような超能力らしい。

世界の誰もが使えるなら良かっただろうけど、この世界に生きる殆どの人は超能力を使えない。
私が知っているのも四人だけだし、みんな世間には秘密にしているらしい。

わたしを育ててくれた血の繋がらない家族、マザーは、超能力の無い社会で生きていけるように、わたしに超能力を使わせずに普通の女の子として育ててくれた。

でも、わたしは、こんな特別な力を持ったのだから、誰かの役に立ちたいってずっと思っていた。

だから、マザーの古い知り合いだという曾お爺さまに力を貸して欲しいと頼まれて、メイドの仕事をすると決めたのだ。


「ごめんなさい。えっと、とにかく頑張ります! マザーも最後は許可をくれたし、わたし曾お爺さま好きです、尊敬してます! だから、役に立ちたいです」


わたしの言葉に曾お爺さまは、眩しい物を見るように、ゆっくりと目を細める。


「ありがとう、寧色。あの子を頼んだよ」


曾お爺さまのその声には、優しさが沢山詰まっていた。


「はい!」


リムジンがゆっくりと止まる。


「到着いたしました」


外から声を掛けられ、ドアが開く。

横に置いていたバッグを手に取り、リムジンから出る。

目の前には、さっき見た白いお屋敷とは違う、クリーム色のこれまた大きく綺麗な洋館があった。


「ここが、使用人達が住む柚子の館じゃ。寧色にもここに住んでもらう」


後から降りた曾お爺さまが、説明をしてくれる。


すごい! 
メイドなのに、こんな素敵な洋館に住めるんだ。



「そして、この男が、執事長の嗣永じゃ」


紹介されたのは、六十くらいのおじいさん。
でも、白髪のない髪は綺麗に整えられていて、執事服も背筋もピッシリと伸びていて、まだまだ現役といった感じ。


「この後は、嗣永が説明するから、しっかりと聞くんじゃよ」

「分りました。精一杯頑張ります!」


わたしの宣言に曾お爺さまは嬉しそうに頷いた。