「さっきは助かった。ありがとう」
周様もお礼言うんだ。
失礼かもしれないけど、意外に思った。
今日の予定は全てキャンセルになり、病院で怪我の治療や検査をした周様と、お屋敷の応接室で向かい合う。
周様に勧められてソファに座っているけど、ふかふかだ。
律果先輩は、わたしにも紅茶を出してくれた。
「いえ、周様が無事ならよかったです。ビックリしましたね」
当たり障りのない返事なのに、不思議なことに返事がない。
え、話してくれない?
もしかしてまだ怒りがおさまっていない?
考えている事が分からなくて、恐る恐る尋ねる。
「周様は、ビックリなさらなかったんですか?」
「慣れている」
あ、ビックリしてないから返事をしてくれなかったんだ。
それなら良かった。
それにしても周様、誘拐されたことが有るとは聞いてたけど、慣れているってレベルなのか大変だ。
「キミこそ、ビックリしなかったのか?」
「ビックリはしましたね。車がいきなりひっくり返って」
「そっちか?」
周様は、困惑した顔。
「誘拐されたことが有るとか、誘拐されるかも知れないとかは聞いていましたから。それより車です!」
「確かに、車が倒れたのは驚いたな」
「整備不良だったんですかねー」
うんうん、上手く誤魔化せていそう。
これなら、わたしがサイコキネシス使ったって思われてないな。
……それにしても、周様と思ったより普通に喋れてる。
冷たい人かと思っていたけど、そうでもないの?
……もし、周様が冷たい人じゃ無いなら、
「周様って、今日誘拐されるの分ってました?」
「確信していたわけでは無いが、いつ誘拐されてもおかしくないと思っている」
「それじゃあ、今日わたしを連れて行こうとしなかったのは、危険だと思ったからですか?」
わたしの質問に、周様は笑う。
「当たり前だ。危険に巻き込むつもりはない」
その顔が美しすぎて、見惚れてしまう。
……綺麗な人。
「なんだ? 何が言いたげな顔をして」
「いえ、とても優しいんだなって」
気にしなくていいのに。
わたしが曾お爺様にお願いされているのは、周様のことだから、周様の誘拐を防ぐのだって仕事なんだから。
「巻き込むつもりがないだけだ。だが、今日はお前に助けられた」
「一番は車が倒れたからどうにかなっただけで、たまたまですよ。それに、守るって言ったじゃないですか。有限実行です!」
「そうか、よくやった」
周様が褒めてくれたから、わたしはとっても嬉しくなる。
「はい。これからも頑張ります!」
これからも、周様の役に立つ様に頑張ろう!



