何時間か経ったところで連絡が来て、運転手さんは車を動かす。
「安藤さん、車で待機する時は、このように待ち時間が多いですが、辛くはありませんか?」
「はい。座席がふかふかですし、大丈夫です!」
「強い方ですね。使用人に向いています」
車を紫王社前の止められる場所で止めて、わたしが外に出て待っていると、周様と律果先輩が大人達と出てきた。
わたしが頭を下げると、キキーと鳴り響く音と、
「っわぁ」
「なんだ!」
焦ったような声が聞こえた。
顔を上げると、周様が目出し帽を被った男達に囲まれ、体を掴まれていた。
「ええっ!」
これって、誘拐!? こんな場所で!?
律果先輩や会社の人たちは抑えられて縛られそうになっており、周様は横道みたいなところに止めてある真っ黒なバンに連れ込まれそうになっている。
やばいやばい。
バン、絶対動いちゃ駄目!
強く祈りながら、周様の元へ駆け寄る。
周様は目を見開き、首を横に振るような動作をする。
「周様!」
律果先輩や大人を縛り上げた人達は、車に乗っていく。
足止め係なのか、目出し帽の大人が一人、わたしに寄ってきた。
しょうがない!
触れられる前の距離だけど、足を持ち上がるように祈ると、
「うおっ」
いい感じにバランスを崩したみたいで、そこを降りてきていた運転手さんが押さえ込んだ。
あの人は運転手さんに任せよう。
それにしても、やっぱり人間ってやりづらい!
バンのドアが締められそうになっているので、閉まらないように念じる。
「おい、ドアが壊れている!」
「いい、そのまま出せ!」
グルルンとエンジンが唸っている。
走り出した車は、流石にサイコキネシスで止めづらい。
ちょっと不自然だけど、しょうがないよね!
せーの!
車体の下から力を突き上げるイメージで、走り始めた瞬間の車を横転させる。
「うわぁああ」
車は見事、横転した。
倒れた車によじ登り、中に手を差し伸べる。
「周様!」
周様は気を失っているのか、ぐったりしている。
周りの人達も、驚いたように目を回していたり、痛そうにしている。
怪我させちゃったなら、ごめんね!
中に入って、周様の体を担ぐ。
ちょっと重いけど、いけなくはない。
「おいっ……」
手を伸ばしてくる人は、起き上がるな〜って、サイコキネシスで上から抑え込む。
事故のせいで体が動かないって思ってくれるでしょ。
助手席のヘッドを足場にして登り、横転した車から脱出する。
「運転手さん!」
近くに来ていた運転手さんに、周様を託す。
「警察は!?」
「呼んでます」
紫王社の警備員さんや、会社の人達もやってくる。
よし、とりあえず一件落着だね。



