メイド三日目。
昨日は大きなミスをしたから、周様とも律果先輩とも顔を合わせるのに緊張する。
「おはようございます。昨日はご迷惑をかけ、本当に申し訳ございませんでした」
「ああ」
頭を下げたわたしに、周様は二文字だけ返した。
昨日もカップとポットを割った事、絨毯を汚してしまった事、予定を変えさせてしまった事を謝罪したけど、その時からこんな感じだし、表情が変わらないから怒っているかは分からない。
クールなのか、怒りを押し隠しているのか……。
「律果、今日の予定は?」
「まず、紫王社の見学、次にチューリップの会の昼食会、午後は若奥様と合流して、クラシックコンサートの鑑賞となっております」
「分った。コイツはついてくるのか?」
周様がわたしにを見る目は、冷たい。
「何の役に立つんだ」って、雰囲気。
うぅ、やっぱり怒っているんだろうな。
当然だけど、辛い。
「車待機で着いていく予定でおります」
律果先輩の言葉に、周様は首を横に振る。
「ついてこなくていい」
うっ、悲しい。
「周様のご意思は尊重したいのですが、執事長から付いていかせるように言われてまして」
律果先輩のに言葉に、周様は何も言わず首を横に振るから、律果先輩が困った顔をする。
律果先輩としても、わたしには付いてきてほしくないけど、執事長に言われているから板挟みになっているんだろうな。
わたしは、周様についていきたいけど、昨日大人しくすると律果先輩と約束しちゃったから、自分の意見は言わないで、周様の気持ちを汲むべき?
……でも、わたし、曾お爺様に、周様のことを頼まれた。
なら、また律果先輩に叱られてしまうかもしれないけど、
「周様、お願いします。連れて行ってください」
わたしは周様に頭を下げて、お願いする。
「何故? お前に何ができる?」
何ができる?
超能力が使えるけど、そんな事は言えない。
「何もできないかもしれません。ですが、ご迷惑をおかけしませんので、お願いします!」
「ダメだ」
「お願いします!」
「無理」
「お願いします!」
「やめろ」
周様がいいとおっしゃってくれるまで、頭を下げ続ける気でいると、律果先輩が口を出す。
「周様、明日からの事もありますし、本日は連れて行って様子を見ませんか?」
えっ……。
意外なことに、止めるかと思っていた律果先輩は、わたしの後押しを押してくれる。
「行かない」
それでも周様は頷かないでいると、執事長が来た。
「周様、昨日の事は私からも重ねてお詫び申しあげます。今日一日、どうか安藤を連れて行ってください」
「……何故、そこまでコイツを連れて行かせようとする。普段の嗣永らしくない」
執事長には、流石の周様も一言では返さなかった。
「ご隠居様の願いなのです」
「曾御祖父様の?」
執事長の言葉を聞いて、周様はきょとんとした顔をする。
その顔は、ひどく幼い。
その後、周様はわたしを見るが、その目は睨んでいるみたいに見えた。
「分った。連れて行こう」
だけど、出たのはOK。
「ありがとうございます!」
周様に大きく頭を下げる。
迷惑かけないように、頑張ろう!



