そうしてじっと待っていると、
「ペン」
周様が、授業の流れに関係の無い言葉を発した。
呼んだってよりは言っただけだけど、これってたぶん、わたし達に言っているよね。
出番だと思って、動こうとして、
「こちらを」
は、早い!
隣にいたはずの律果先輩が、もう周様にペンを差し出している。
わたし、まだ一歩も歩いてないのに、律果先輩は呼ばれるって分かっていたみたいな早さだ。
わたしもメイドなんだし、あの早さで行かなきゃ!
そう思ったけど……
「紅茶でございます」
「ありがとう。ちょうど欲しかったんだよ」
「この資料を出して」
「ただいま」
「あ、ペンが」
「どうぞ」
律果先輩が、いつも早い!
紅茶は欲しいって言われる前に用意するし。
言われた資料は、すぐ出すし。
落ちたペンは、一瞬で拾っている。
「律果」
「こちらでございますね」
律果先輩が差し出した本を周様が受け取る。
名前を呼んだだけで何も言ってないのに、心を読んだかの用に望まれている物を渡すなんて!
律果先輩ってぶっきらぼうだから、執事としてどうかなって思ったけど、完璧執事だ!
戻って来た律果先輩をまじまじと見ちゃう。
「前を向くものですよ」
「はい」
その声は、静かながらもしゃんとしていて、執事長に似ている。
ううー、律果先輩完璧だ。
完璧すぎて、わたしの出る幕がない!



