ギィーと低音を響かせながら、門が開く。
門を開けた二人の大人は、綺麗な角度で背中を曲げ、頭を下げていた。
敷地の中へ、リムジンは流れるように進む。
その奥には、真っ白な壁の洋風のお屋敷が見えた。
家に近い木の大きさからして、お屋敷はとっても大きいはずなのに、小さく見えるのは、お屋敷までが遠いって事だよね。
敷地、とっても広いんだな。
うちの村で一番お家が広かった、館林さんちよりも広そうだ。
「そんなに体をねじって窓の外を見なくても、もうすぐ外に出られるぞ」
声をかけられ、わたしは体の向きを直す。
縦に長いリムジンは、普通の自動車とは違って、横向きの長いソファの様な座席と、一番後ろに、よくある前を向いた座席がある。
今、声を掛けて来たのは、前を向いた座席に座って居る、わたしが曾お爺さまと呼んでいるお人だ。
長い白髪と髭に、高そうな和服を着たその姿は、仙人みたい。
「ごめんなさい。初めて本物のお城の様な家を見たから、わくわくしちゃって」
今まで住んでた田舎の村や、たまに行く町や大きな市でも見たことのない建物だからつい見ちゃったけど、田舎もんの行動だったかな。ちょっと恥ずかしい。
「謝ることはない。だが、今日から寧色には、ここで働いてもらうのじゃ、嫌と言うほど見ることになるぞ」
「嫌になるなんてこと、絶対無いです! こんな素敵な場所で働けるなんて」
ぎゅっと両方のこぶしを握って、気合い入ってます! とアピールするが、曾お爺さまは、申し訳無さそうに目を伏せる。
「すまないな。寧色は、まだ子供なのに働いてもらって。しかも、危険が無いとは言えない仕事を」
「良いんです! わたし、他の人にはない力を持っていて、この力で出来ることがあるならしたいんです!」
「こらこら、そう大きな声で言うもんじゃないぞ。マザーとも約束したんだろう」
「あっ、そうだった」
慌てて、口を塞ぐ。
曾お爺さまは知っているからって、気にせず口にしちゃった。
わたしが持つ、他の人には無い不思議な力の事を。



