宵にかくして





「蒼唯さんと話してみたかったから」


おれたち、話すの初めてだよね……って。
何気なくこぼされたセリフに、静かだった教室が一斉にざわめいた。



「え、えまちモテモテ……っ!」

「わ〜ん不和からの逆指名激アツっ」



なぜか興奮気味なふたりだけど、私はただただ困惑するしかない。

 

「(……話してみたい、なんて)」



だって、アイスブルーの瞳の奥は、ちっとも笑っていない。今朝のニュース番組で見た綺麗な笑顔とも、寮で向けられる冷ややかな眼差しとも違う。



まるで精巧に作られた仮面のような、温度の欠けた笑み。
……"蒼唯さんと話してみたかった"なんて現実味のないセリフには、不和くんなりの回避策の意図が込められているのかな。



目立たない・騒がない・華がない、 ────……そんな条件が揃った私に声をかけることで、不和くんは荒波を立てずに研修を終えようとしているのかもしれない。