そのままむくりとソファに沈んでいく吉良くんを眺めていれば、不意に顔を覗き込んでくる宵宮さんと視線が絡みあう。
わ、ち、近いっ……!
思わぬ至近距離にぎゅっと目を瞑ってしまえば、ふ、と耳の近くで微かに笑われて、恥ずかしくなる。
「……歓迎する。
────ウォーデン寮にようこそ、サナ」
仄かな笑みとやさしい温度の声音を向けられて、きゅっと胸の奥が疼く。
微かにゆるんでいく口角を持ち上げたまま、宵宮さんのセリフにこくりと頷けば、……突然反対側からぎゅっと引き寄せられて、身体が傾いた。
「さーな、……桜だけじゃなくて、おれ達とも仲良くしようね?」
にっこりと甘やかな笑みを浮かべるなぎ兄、……口元から覗く八重歯がきらりと光って、思わずそのまま見つめてしまう。
にこにこフレンドリーで距離を詰めるのが得意な所も変わってないなあ……とぼんやり考えていれば、宵宮さん片腕を掴まれて、ぎゅうっと力がこめられる。
「……あ、あの、っ?」
「……ハア、お前ら手加減しろ。サナは1人しかいないだろ」
無言で引っ張ってくる宵宮さんと、にこにことした笑顔のまま離してくれないなぎ兄。両方から引き寄せられる感覚に目を丸くしてしまえば、呆れた表情のかや兄が助け舟を出してくれる。
……すこし、前途多難な寮生活、だけど。
「(……頑張ろう、サナとして)」
宵宮さんとなぎ兄にぐいぐいと引っ張られながら、そんな決意を固めたのだった。



