ぼくの姫さまは王家に準ずる侯爵家の四女で、歳の離れた三人の姉がいた。
正確には姫ではないらしいが、近い身分であることと、その見目麗しさを賞賛されてみんなにそう呼ばれている。
お姉さん達はそろって黒髪で、なんでも頭脳明晰の女傑ぞろいで、上のふたりに至ってはすでに由緒正しき家々に嫁に出ている。
そこに生まれたのが姫さまだ。
金髪碧眼。
華奢で、抜けるような白い肌に、おっとりとした性格のちょっと病弱なぼくの姫さまは、侯爵家で蝶よ花よと育てられた。
すでに姉達が自ら積極的に政略結婚を済ませていたので、侯爵としても、姫さまは政治の駒にする必要のない、ひたすら可愛いだけの愛玩具的存在だったのだろう。
ただ、遅くにできてしまった娘であるため、侯爵そのひとが亡きあと、姫さまを堅実に誠実に確実に養い、守ってやれる婚約者が必要だと考えた。
体が弱いため跡取りを産めるかどうか危ぶまれたので、地位の高い貴族は姫さまを正妻とするのに躊躇したのだ。
そこで選ばれたのがあの大馬鹿者、グラント将軍だ。
実力で得た地位こそ高く、うなるような財産はあるが、生え抜きの軍人であり家系は男爵とあまりパッとしない。よしんば世継ぎができなくても、侯爵家と縁を持てるだけで納得するだろう、と。
ある意味、ぼくとこの大馬鹿者は、同じ境遇にいるといえた。
──侯爵が選んだ、姫さまを守ための男。
そして義務であるはずの姫さまを守ることを超えて、彼女を愛してしまった男。
正確には姫ではないらしいが、近い身分であることと、その見目麗しさを賞賛されてみんなにそう呼ばれている。
お姉さん達はそろって黒髪で、なんでも頭脳明晰の女傑ぞろいで、上のふたりに至ってはすでに由緒正しき家々に嫁に出ている。
そこに生まれたのが姫さまだ。
金髪碧眼。
華奢で、抜けるような白い肌に、おっとりとした性格のちょっと病弱なぼくの姫さまは、侯爵家で蝶よ花よと育てられた。
すでに姉達が自ら積極的に政略結婚を済ませていたので、侯爵としても、姫さまは政治の駒にする必要のない、ひたすら可愛いだけの愛玩具的存在だったのだろう。
ただ、遅くにできてしまった娘であるため、侯爵そのひとが亡きあと、姫さまを堅実に誠実に確実に養い、守ってやれる婚約者が必要だと考えた。
体が弱いため跡取りを産めるかどうか危ぶまれたので、地位の高い貴族は姫さまを正妻とするのに躊躇したのだ。
そこで選ばれたのがあの大馬鹿者、グラント将軍だ。
実力で得た地位こそ高く、うなるような財産はあるが、生え抜きの軍人であり家系は男爵とあまりパッとしない。よしんば世継ぎができなくても、侯爵家と縁を持てるだけで納得するだろう、と。
ある意味、ぼくとこの大馬鹿者は、同じ境遇にいるといえた。
──侯爵が選んだ、姫さまを守ための男。
そして義務であるはずの姫さまを守ることを超えて、彼女を愛してしまった男。


