しばらくすると、二度目の死がぼくを蝕もうとしているのを、本能で感じるようになった。
一度目はルークとして。
次にこの蝶として。
今朝も姫さまは相も変わらず、屋敷の裏手の丘にあるぼくの墓標を参ってくれていた。両手いっぱいに咲き誇った花束と、ぼくが好きだったバターの香るビスケットをたずさえて。
空はまだ晴れていたが、まもなく雨が降るだろう。
それも大地を洗い流すような豪雨が。
蝶であるぼくは、なぜかそれを触覚に感じることができた。それは生存本能というものなのだろう……たとえ先は短くても、どんな姿形でも、息をしている限りそれは存在するらしい。
ただ問題は、ぼくの姫さまには、その生存本能があまりないらしいことだった。「あまりない」どころかまったくない。いつもそうだ。
姫さまはとても危なっかしくて、そこが周囲の保護欲をそそるのだけれど。
「ルーク……あなたが恋しいわ。ひとりでは眠れないの。あなたが隣にいてくれないと」
そうだ。
そうだね。わかるよ。ぼくだって恋しい。君の隣にいたい。君のベッドで、君に寄り添って眠りたい──あの頃みたいに。
「今日はね、お屋敷にグラント将軍がいらしてくださるの。でも、わたし……あの方にどう接していいか、まだわからないわ。いつも怖い顔をなさってわたしを見ているもの……。きっと呆れられているんだと思うの。わたし、お姉様達のように賢くないから」


