本当に最後の最後の力で宙を舞い、換気のためにわずかに開いていた扉窓をすり抜けて、ぼくの墓標のある丘を示した。雨はすでに嵐になって、地上の生命の営みを嘲笑うように荒れはじめている。
一匹の蝶となったぼくが耐えられる種類の天候ではなかった。
ぼくはぺたりとその場に落ちて、動けなくなった。
でも、後悔はしていない。
ぼくは生まれてすぐ、生まれたばかりの姫さまの護衛になった。姫さまはよくぼくのことを「アイリーンの騎士」と呼んだから、ぼくは騎士なんだと、いつも思っていた。
いつも姫さまに寄り添って、姫さまを守り抜いてきた。
最後にこうして、次に君を守ってくれる男の存在を知ることができて、よかったと思う。命の短い蝶になれたのは、神のご慈悲か。
偶然か。
どちらでもいい……。どんな姿になっても、いくつ転生を重ねても。
君の幸せを祈るよ、ぼくの姫さま。


