そのまま刻々ち時間は過ぎて、あいつからの電話を忘れかけながら文化祭当日を迎えた。

アウロラ学園の文化祭は2日にわたって開催される。

1日目は出店がメインで、投票率が高い。

2日目はイベントごとがメインになる。

部活動の出し物があったりもするのだが、1番人気はやはりミスコンだ。

今年からデステニーの制度が加わったことで、ペアで参加することになった。

うちのクラスはもちろん私が選ばれた。

なんてったって去年の優勝者だからね。

雪那もオーケーしたんだから、やるしかない。

まあ、ミスコンは明日だから。

今日は1日中当番だ。

今日の朝行けば衣装が発表されて、それを着て接客をするだけ。

去年と同じ結果になるのは分かってるんだけどね。

他校の先生方とかも結構くるんだけど、理由が私にある。

医者家系の七瀬初音を見たいと来場してくるのだ。

全く困ったもんだよね。

そんなことを考えているうちに、教室についた。

内装はしっかりしてある。

昨日黒板にたくさんイラストを描いたから、少しわちゃわちゃしてるけど。

「あ!七瀬さん、おはようございます!」

彼女は紫雲美羽(しうんみう)

名前の通り紫の入った髪と瞳の色と、少しつり目なのが彼女の特徴。

そして、美羽は文化祭実行委員だ。

「おはよう美羽。それで、衣装を見せてほしいんだけど…」

「あ、はい!もちろんです!!」

ちょっと待って!と言ってから、彼女は衣装をあさった。

それから、私の衣装だと言ったのは…。

「え…?これ着るの?!」

残念ながら、私に拒否権というものは存在しなかったのだ。

いよいよ文化祭が開始した。

コスプレカフェは大混雑で、今1番人気なんじゃないかなと思う。

ちなみに羽那は美が目立つ悪魔の衣装を、詠はかわいいさのある天使の衣装を着ていた。

「投票してくれないと…いたずらしちゃうよ?」

「投票よろしくです!」

2人とも役っぽくなってる、グッジョブ。

私はどんな衣装か知りたい?

絶対言いたくないし、特に雪那にはバレたくないんだけど。

「えっと…ご注文おうかがいします。…ご主人様」

メイド服だったのだ。

しかもスカート丈が短いのはなんでだろうね。

スタイルもよくしておいてよかった、と本当に思った。

その後は指名ばっかで疲れちゃった。

やっとお昼の時間になって、美羽から1時間の休憩をもらった。

宣伝がてら外歩いてきて!と美羽にお願いされたのだ。

明日は雪那と一緒に回るんだけど、今日は誰とも約束していないので1人で回ることにした。

「屋台でいろいろ買って、クラスのみんなにもあげるか」

そう思って、たくさん買い始めた。

だんだんと持っているものが多くなってきて、そろそろ帰ろうかな〜と思ったところ。

「ねぇ、お姉さん1人?俺らと回ろうよ」

振り返るとそこには、3人の男がいた。

私は顔をしかめて彼らに言った。

「すみません。今からクラスに戻るところでして」

「え〜そうなの?てかクラスどこ?俺ら君のとこ行きたいなー」

面倒だな、と感じたがそろそろ本当に戻らなくちゃいけない。

どうしようかと考えていると、男に腕をつかまれた。

「嫌っ!」

私はとっさにその手を振りはらう。

「っち!てめぇ調子乗ってんな?!」

私が手を振りはらった男が手を振り上げた時、やばい!と思って目をつぶった。

けれど、衝撃はいつまで経ってもこなかった。

ゆっくりと目を開けると、そこに立っていたのはあいつだった。

「俺の彼女になんか用?」

涼真(りょうま)…」