漂う花は、還り咲く


私の手は、まだ男の袖口を握ったまま。

さっきまで温かかった手が、急に冷たくなっていた。

男が立ち上がって何かを言いかけたけど、私が前に一歩出ただけで、そいつは一瞬ビクリと後ずさった。


「チッ なんだよ行こうぜ。」


男たちはぶつぶつ言いながら離れて行った。



「六花、今の、なに…?」

「え?あ、えっと、なんか体が勝手に…。ごめん、びっくりした?」

「ううん…ありがとう、助かった。でも…なんであんな動き、できるの?」

「分からない…。才能、かなぁ?」

無理やり笑うけど、心臓がまだバクバクしてる。


相手が動く前に、力の入れ具合も、倒し方も、全部分かってた。

こんなの、初めてのはずなのに。

ーーーもしかして、初めてじゃなかった?


ううん、違う。考えるのやめよ。

私は普通の高校生。

友達とカラオケ行って、おしゃべりして、ちょっと強めに人を止めただけ。


ーーーねぇ、これってやりすぎだったのかな。

その感覚が分からない自分が、少しだけ怖かった。


「ほんと大丈夫?怪我してない?」

「うん、大丈夫大丈夫!私こそビビらせたかも。変なスイッチ入っちゃったというか…」

「なんかさ、六花が一瞬別人に見えた」


その言葉が、胸に刺さった。

でも、笑ってごまかすしかない。


「ないない、私がそんなワケないじゃん!」


そうして、なんとか自然な流れでその場は解散になった。