二人はすぐに了解してくれ、約束していた玄関に向かう。

そこにはまだほのかちゃんがおらず、ホッとしながら獣人から人間の姿に変身した。

そのあとすぐほのかちゃんが来て、靴を履きだしたので、俺はいつもよりもっと優しい声音で「行こうか」と言った。

二人で他愛のない話をしながら、目的地であるカフェに向かう。

―――カランカラン

カフェのドアを開けると、そんな乾いた素朴な音が耳に入った。

「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」

店員はそう言って、カフェの空いている場所まで案内してくれる。

「ご注文がお決まりになったらお声をおかけください。ごゆっくりしてくださいね」

俺たちが席に座ると、店員はそんな様子を見た後にそう言ってその場を去って行った。

ほのかちゃんは、アイスティーとサンドウィッチにすると言って、メニューを持ったまま黙り込んでしまった。

俺はそこまでお腹が空いていたわけではなかったので、アイスミルクコーヒーと小さなフレンチトーストを選択し、俺とほのかちゃんの注文を近くにいた店員に伝えた。

そのあとすぐに頼んだ飲み物が運ばれてきたが、ほのかちゃんはメニューを見るフリでもして考え事をしているのか、それに気が付いていなかった。

「ほのかちゃん」

名前を呼んでみるも返事はない。

「ほのかちゃん？」

不思議に思ってもう一度そう言う。

「ほのかちゃん、ほのかちゃん！」
「へっ⁉」

ほのかちゃんはハッとして、驚いたようにこちらを向いた。

「どうしたの？」

ほのかちゃんは少し間をおいて、気を取り直したかのようにそう言った。