―――コンコン

ほのかちゃんとソラが言い合って喧嘩をした次の日の昼前。

ほのかちゃんがこの時間になっても起きてこなかったので、俺は心配になってほのかちゃんの部屋を訪ねた。

「モカです……入ってもいいかな?」

俺は少し控えめにそう言った。

すると、少し間があった後に「もちろん!」と言うほのかちゃんの元気な声が聞こえる。

でもその声は、俺にとっていつものほのかちゃんじゃないように感じた。

どうしてだろう?と考えながらほのかちゃんの部屋のドアを開けると、すぐに分かった。

ベッドの上に座っているほのかちゃんの顔は、表情はニコニコしているのに雰囲気がとても悲しそうに感じた。

けれど、怒っている感じではなかったのだ。

俺は部屋に足を数歩踏み入れた後、バッと頭を下げた。

「昨日のソラが、ごめん!ほのかちゃんに理不尽なこと、言っちゃって……」

そんなことを口にして、恐る恐る顔を上げる。

これは、俺にとっての精一杯のソラのことへの謝罪と、ソラとの仲間意識からだった。

前者の方は……好きな子を悲しませたくないし?

「全然大丈夫……って言ったら嘘になっちゃうけど、モカが謝ることじゃないから、大丈夫だよ」

ほのかちゃんは、そう言って元気な笑顔を見せた。

けれど、その笑顔もどこか空回ってしまっているように思えた。

「そっか……」

俺はそのことが気になっていしまっていたせいか、ほのかちゃんを気遣った回答が出来なかった。