「実は、最近ペットショップ本社の営業実績が伸びてきていてね、会社が少し大きくなったのよ」
「えっ、すごいじゃん」

お母さんが一息ついたタイミングで、さっきの戸惑いを忘れて素直にそう褒めた。

「ありがとう。それでね、お父さんが最近ペットショップ経営以外の事業にも手を伸ばそうってね……余裕がまだあるから色々なことにチャレンジしてたらね、なんと!!」

お母さんがそこで止めたので、私は復唱するように「なんと?」と返した。

「動物関係の海外の大企業から声がかかったの!で、家族みんなで海外……詳しくはアメリカに行こうと思ってるんだけど……ほのかはどう思うかしらって」
「ええぇぇっ!?!?!?」

私は驚きを隠すことが出来ず、素っ頓狂な声を上げた。

それと同時に、色々な気持ちが心の中に流れ込んでくる。

お父さんとお母さんにはまだ獣人たちの話はしていないんだけど、獣人たちのことはどうすればいいのか、それに星恋や芭音とは離れたくないし、獣人たちとも同じ気持ちだ。
だからと言って、お父さんとお母さん二人と離れてしまうのも嫌……。

そんなことが頭を駆け巡って、私は自分自身が自分勝手だなと思う。

私は頭のゴチャゴチャとした気持ちを頭の中で整理しながら、お母さんの方を向く。

「ごめん、今は……分からない。一旦、保留にさせて」

私がそう言うと、お母さんは私の気持ちを少し察してくれたのか「分かったわ」と優しく言ってくれた。

「ありがとう」

私はお母さんにそう言って、ホチキスを手に持って作業を再開した。

そのままほとんど話さずに作業を終え、お父さんに挨拶をするのも忘れて家に帰った。

私は頭で自分が思ったことを駆け巡らせ、どうにかして整理しようとした。

けれど、その気持ちは中々に複雑化してしまって、整理しようにも出来ない。