次の日。僕とモカとモカのお母さんの三人でお母さんを探しに行っていた。

昨日は川が増水までして、本当に大変なことになっていたらしい。

けれど僕は絶対にお母さんは生きていると信じて川沿いに向かった。

僕とモカ、モカのお母さんに分かれて、増水してグチャグチャになった土を踏みながらお母さんを探す。

モカのお母さんは上流の方、僕たち二人は下流の方を探した。

探し始めてしばらく下流の方に歩いて行った時、倒れている獣人が見えた。

その倒れている獣人の後ろ姿はお母さんにそっくりだった。

『お、お母……さん?』

僕はそう小さく呟きながら倒れている獣人に近づいた。

俯せになっている体をモカと二人がかりで仰向けにした。

絶対に違う、と心の中で念じながら恐る恐るその人の顔を見る。

けれど、その人の顔は、ドロドロに汚れて顔に切り傷をたくさんつけたお母さんだった。

僕はお母さんだと分かった瞬間、その場に崩れ落ちた。

ワンワンと泣き喚きながら、『お母さん』と何度も名前を呼んだことを覚えている。

でも、決してお母さんから返事が返ってくることはなかった。

抱きしめた体も冷たくて、体も傷だらけ。
心臓の音も聞こえない。体ももう固くなってしまっている。

僕は冷たいお母さんの体を抱きしめて、たくさん泣いた。

モカは、複雑そうな今にも泣きそうな顔をしながら僕の背中を優しくさすってくれた。

そのあとのお母さんのお葬式のことまで、なぜだかほとんど記憶にない。

気が付いたら家にいて、お母さんの知り合いの人がいっぱいいて話していた。

流れるようにお通夜、お葬式が終わって、僕は箱の中に入れたお骨のツボを抱えて椅子に座っていた。

どうやってお骨をツボに入れたのかも覚えていない。

あとから聞いたんだけど、お母さんは採掘中に川の増水で流されてしまったらしい。

体が傷だらけだったのもそのせいなんだと。

そのあと、お父さんがいない僕はモカの家に引き取られることになった。

その日、モカたち家族は僕のことを笑顔で迎えてくれて、また涙が流れそうになった。

その瞬間、ぼくはもう泣かないと決めた。大雨の日はこうして泣いてしまうけれど……。