「ほのちゃん……スンッありがとう。僕の過去、話させてほしい……」

僕、有栗鼠リオは、ほのちゃんに向かってそう言った。

「うん」

僕のことを抱きしめてくれているほのちゃんは覚悟をしたようにそう言って僕の方を見た。

僕は、意を決して絶対に忘れることなんか出来ない……あの日の話をし始めた。


僕は小さい頃、正確に言うと8歳までお母さんと二人で暮らしていた。

お母さんは医学研究者で、自分で採掘に行ってそれを研究して薬を作っていた。

お母さんは最低でも週に二回は採掘に行って素材を集めていた。
晴れていても、雨が降っていても、風が強くても、どんなに暑くても寒くても必ず決まった日に採掘に出かけていた。

あの日、お母さんはいつもの時間に川沿いに採掘に出かけた。

お母さんは今日集めたい素材は多いから遅くなるという理由で、帰ってくるまで近所のモカの家に僕を預けた。

お母さんが言って二時間くらい経った頃、小雨が降り始めた。

いつもなら、これくらいの雨であれば、お母さんは採掘は続けていた。

けれど、雨はどんどん強くなっていって、打ち付けるような激しい大雨に変わっていった。

流石のお母さんもこれくらい雨が降っている日は、採掘は諦めていた。

でも、あの日は違う。
もうお母さんは出かけた後だったから。

僕は何度もモカの家を飛び出そうとして、モカとモカのお母さんに止められた。

しばらくすると、雷もなり始めて獣人の森では外出禁止令が出された。

そうなってもお母さんは帰ってこない。

いつ帰ってくるのかと僕は期待しながら、大雨が降り雷が鳴る外をじっと見つめていた。

結局その日、お母さんはモカの家に、僕のもとに帰ってこなかった。