──母になることすら、許されなかった私。
春のはずなのに、窓の外に咲く桜はどこか色褪せて見えた。
ほんの少しだけ開けられた格子窓から差し込む光は冷たく、部屋の中の空気も澱んでいる。
柔らかな布団に寝かされているはずの身体は、鉛のように重かった。
腹部には、まだ鈍く残る痛みと、微かな空虚があった。
──ああ、私は……。
目を閉じれば、つい数時間前の記憶が浮かぶ。
血と汗にまみれ、悲鳴のように響いた産声。
医師でもなく、助産師でもない冷ややかな侍女たちが周囲を囲む中、私は息子を産んだ。
愛されたわけでもない男の子を、侯爵家という家の後継ぎのためだけに。
それでも、生まれたばかりの小さな命がこの胸に抱かれたとき、私は初めて震えた。
あの子は……温かくて、小さくて、ふわりとした花の香りがして、まるで春そのもののようだった。



