誰にも言うなよ ~結婚式の後始末~

 



「有働啓介こと、小日向啓介です」

「逆だろ。
 小日向啓介こと、有働啓介だ」

 娘の紹介を遮り、啓介はそう訂正した。

 啓介は玄関に回り、キッチンまで入ってきていた。

 ほたるは眉をひそめ、
「私にとっては、有働啓介の方が仮の姿です。
 そう思ってるから、編集さんもあなたに顔も名前も出させないんじゃないですか。

 そこそこイケメンなのにっ」
と言う。

「そこそこじゃなくて、かなりだろっ」

「……小日向啓介?
 作家の?」

「おお、君も私のファンかい?
 サインと握手をしてあげよう」

 啓介は勝手に明巳の手をとり、握手をしはじめる。

「知ってるってだけでしょ?
 ファンなんて言ってないじゃないですか」

「私の作品を読んだら、誰でも私のファンになるはずだよ」

「じゃあ、なんでいつも芥川賞とれないんですか?」

 啓介は沈黙した。