「社長、どうさかれましたか?」
明巳が会社で渋い顔をしていると、若田がそう訊いてきた。
「いや、実は家のふだん、俺たちが足を踏み入れないところに足跡があって」
ちょっと日に当たらない湿った感じの地面。
草も踏み荒らされていた。
「社長のおうちとか、警備会社のセンサーとかついてるんじゃないんですか?」
「今まであの家に住んでいるのは俺だけだったし。
そんな金目のものもあそこには置いてないし」
価値ある建物と内装らしいのだが。
その内装も天井から生えている手とか、簡単にとって逃げられるようなものはないし。
第一、あれらのものは、あそこにあるから芸術なのであって。
それだけ持って帰っても価値は下がるようだった。
そんな感じなので、今まで特に警備会社と契約したりはしていなかった。



