誰にも言うなよ ~結婚式の後始末~

『あんまり大丈夫じゃないです。
 それで、ちょっとお掃除できなくて』

 さっきまで進まなかったワインをぐっと呑んで、明巳はまた打った。

『そうなのか』

『今、どこですか?』

『家だ』

『キッチンですか?』

『そうだ』

『まだいるのなら、ちょっと行きます』

 ここへ来るのか。
 海老を骨折してるのに……。

 いや、海老を骨折してるってなんだ、と思ったあとで、ほたるが来るのなら、酒とつまみを用意しといてやるか、と立ち上がる。

 家で誰かのためになにかしてやろうなんて思うの初めてだな、と思った。

 この家には今まで誰もいなかったし。

 実家でもあまり家族は見なかったし。

 そもそも、自分などよりはるかに気の利くじいやたちが、家族のために、さっと動いていたので、自分はなにもする必要がなかったから。

 誰かのために、なにかするって、新鮮な気持ちだな、と思いながら、明巳は牡蠣のアヒージョの缶詰とチーズの詰め合わせを探してきた。

 ファミレスでメニューを見ていたとき、確か、こんな感じのものが好みだと言っていた気がするから。