帰り際。
専務が気を利かせて、ほたるの仕事風景を見せてくれた。
廊下の窓から眺めていると、なかなかのやり手に見える。
俺はほんとうになにもあいつのことを知らないな、と思う。
誘拐されてたとか。
実の親と暮らしたのは、わずか数ヶ月でしかないとか。
縁もゆかりもないおばあさんに育てられ、そこには、仮の親も別にいたとか。
なにも想像できてなかった。
……いや、できるわけないだろう、と明巳は感傷的な気分から正気に返る。
そんな環境のやつ、そうそういない。
想像できるわけもないっ、と気づいた。
そういや、結局、犯人の女は何処行ったんだろうな、と思いながら、専務に頭を下げて帰ろうとしたら、ほたるがこちらを見た。
ちょっと迷って小さく手を振る。
ほたるは普通に友人に振るように振り返してきた。



