誘拐されて捨てられた、か。
翌日、明巳は用事で訪ねた系列会社の廊下を専務に案内されながら、歩いていた。
秘書の若田も一緒だ。
強烈すぎた昨日の妻との会話をつい何度も思い出してしまう。
「仕事で近くに行って、自分の生家を見つけたと言ったな。
じゃあ、お前は今の家族とは、社会人になってからなのか」
「はあ、出会ったのは、つい最近です」
「だったら、ほとんど実の家族とは暮らしてないじゃないか。
家族と合わなくて、俺のところに出されたのか?」
そう明巳は言ったが、いやいや、とほたるは手を振る。
「あなたとの結婚は、無事帰ってこれたご褒美と、父からの贖罪だそうです」
「……褒美になってるか? これ」
「そこのところの解釈は、まあ、人それぞれですかね?」
とほたるは小生意気なことを言う。
妻とは遠慮のない生き物だな。
いや、あいつがそうなだけなのか?
と思ったとき、目の前に、その妻本人が現れた。



