誰にも言うなよ ~結婚式の後始末~

 


 数日後。
 キッチンに人がいた。

 今度は悲鳴を上げなかった。

 ゴキブリじゃないんだから、キッチンにいたからと言って叫ばなくていいし。

「どうしたんですか?
 空気が(よど)んでますよ」

 明巳は広いキッチンの片隅にあるスツールに座っていた。

 殴られすぎたボクサーみたいに天を見つめて放心状態だ。

「いや――
 俺は実は使えない人間なのだろうかと思って」

「……少なくともファミレスでは使えない感じでしたね」

 ほたるは素直に認めて、そう言った。

 なにかこう、誤魔化しようもない感じに使えなかったからだ。

「お前は人に頭を下げられないから、ちょっと系列の店でも回ってみろと言われて、おのれの立場を隠して回ってみてるんだが」

 なにも隠せてないような気がしますが。

 他の店員さんの気の使いよう、半端なかった。

 なにも知らされてないにしても、この人、もうなんというか、オーラが違うからな、とほたるは思う。