部屋に一晩こもったあと、
「いやあ、いい朝だなあ」
と啓介はご機嫌で出てきた。
筆が進んだようだ。
「突然、邪魔して悪かったな」
と帰り際言う啓介に、
「いえ、おかげで楽しかったです」
とほたるが言うと、啓介は驚く。
「どうした、ほたる。
大人になって」
……あなたに言われたくないですね。
あなたはいつまでも子どものようですが。
でも、作家だからこれでいいのかもしれないし。
あなたが私を連れて帰らなければ、今、私はここにこうして生きてはいらなかったかもしれないし。
啓介は口が軽そうに見えて、過去の多くを語らない。
「ありがとうございます。
おかげで、早島のお父さんも楽しそうでした。
小日向……
お父さんのおかげです」
とほたるが言うと、
「やめろ、寂しくなるだろ。
ああ、こいつ、もう俺の手を離れていったのかと実感して」
と啓介は言う。



