「いきなり、家の主がいて驚いたのよ」
いや、向こうはこちらに気づいてなかったんだけどさ、
と昼、社食で珈琲を飲みながらほたるは言って、意味がわからない、と同期の心凪に言われた。
――社食のお金、引き落としでよかったな。
今、現金ないもんな、と思いながら、貧乏な生活の中のちょっぴりの贅沢である、珈琲を飲む。
「結婚してから全然会ってないんでしょう?
何処かにいるのかもわからない美形とかなんの役に立つの?」
まあ、近くにいても、特に役に立ってくれそうにはないんだが……。
ほたるは、数度しか見ていないうえに、こちらにまったく興味のなさそうな明巳の顔を思い出していた。



