響け!猛毒のグラーヴェ

注文したビールが届いた。レオンハルト、ルートヴィッヒ、ジョセフは乾杯をしてグラスの中身を飲み干していく。空になったグラスをカウンターに置いた後、ジョセフが言った。

「そういえば、レオンハルト殿は新しい事務員を雇ったそうですな。先ほどの会話がチラリと聞こえたもので」

「はい。人間の女性です」

「どのような人なんですか?」

ジョセフの質問にレオンハルトは言葉が詰まった。どのような人か、リズのことを話そうとすると言葉が出てこないことが多い。

リズは真面目で仕事熱心だ。カナタに教えてもらったことをすぐに覚え、書類作成をきちんとこなす。しかし、時折り彼女が憂いを帯びた目をしている時がある。そんなリズからレオンハルトは目を離すことができない。「美しい」と思うと同時に、切なさや悲しみを胸の中に感じるためだ。

「とても真面目な方です。仕事熱心で私も負けられないと思います」

当たり障りのない言葉をレオンハルトは紡いだ。ジョセフは「なるほど」と言った後、鞄の中から雑誌を取り出す。それは音楽を楽しむための魔法がかけられた雑誌だ。