響け!猛毒のグラーヴェ

レオンハルトは警戒しながらも再びルートヴィッヒの隣に座る。そしてビールを飲んだ。冷えたビールが動揺に満ちていた脳を落ち着かせていく。レオンハルトは息を吐いた。

「兄さんが調べてリズの名前がなかったのなら、それはきっと本当のことなんでしょう。それが引っ掛かります。何故、普通の人間の女性であるはずの彼女が偽名を使う必要があるのか……」

「軍で調べてみようか?」

ルートヴィッヒの提案にレオンハルトはすぐに首を横に振る。先ほど動揺していたはずのその目は、輝きに満ちていた。

「この謎は私が解かなくてはならない謎です。なので、兄さんは絶対に調べないでください」

リズのことを、レオンハルトは何も知らないことを改めて知った。メレ国出身だということ、人間だということ、人身売買をされたこと、男装をさせられていたこと。知っているのはこれだけである。謎を解くためのピースはまだまだ足りない。

「どうやら私は弟に特大の謎をプレゼントしてしまったようだね」