響け！猛毒のグラーヴェ

「何かの間違いではないでしょうか？リズはこの国の出身ではありませんし、何かの手違いでは……」

震える手でレオンハルトはビールを口にする。何故、ここまで自分が動揺しているのか自分で理解できなかった。

リズの生まれはトロンペーテやレークヴィエムがある大陸から少し離れた島国・メレ国だ。海に囲まれたその国は曇りや雨が多く、農作物があまり育たない。しかしメレ国独自の技術で編み出される服飾品が美しく、世界中の国を相手に貿易を行っている。

「レオン……」

ルートヴィッヒは一瞬目を伏せた後、杖を取り出す。そしてレオンに向けた。彼もまた、レオンハルトと同じ魔法使いである。

「タルダンディ！」

光線が飛び出す。防御魔法は間に合わないと判断し、椅子から素早く立ち上がって光線を避ける。光線は壁に当たって消えた。

「兄さん、いきなり忘却魔法をかけようとするのは卑怯ではありませんか？」

念の為にレオンハルトは杖を取り出して構える。ルートヴィッヒは杖をテーブルに置き、ソーセージを食べ始めた。

「レオンの動揺を見ていたら、先ほど私が言ったことは忘れた方が幸せかもしれないと思ってしまってね」