響け！猛毒のグラーヴェ

レオンハルトはエミリー・ストーンのサインに注目した。他の二枚の絵と比べていく。字の大きさなどは全て違うため参考にならない。しかし、女性の絵だけやはり妙な点があった。

（サインで最初に書くEの書き始めた部分が全体的に見て濃い。それにサインした箇所の付近に絵の具が追加で塗られている。字が擦れて絵を汚してしまったんだろう）

間違いなく偽物の絵はこの女性の絵だとレオンハルトは確信した。しかし、ただ偽物の絵を当てただけでは探偵として満足のできる答えにはなっていない。

（どんな人物が描いたのか推理してみよう）

レオンハルトが意識を集中させようとしたその時だった。ドンドンドン、と激しく部屋のドアがノックされる。

集中を邪魔されたことにレオンハルトは少し苛立ちを覚えたものの、苛立ちを人前で見せるなど恥ずかしい。息を吸い込んで気持ちを落ち着かせようとした時、「レオン！！起きてるか！！」とアントーニョの声が響いた。

「トーニョ？こんな夜にどうしたんだい？」