響け!猛毒のグラーヴェ

(必ずこの謎を解く……!)

レオンハルトはそう心の中で誓い、拳を握り締めた。



晩餐会が終わり、部屋に戻ったレオンハルトはシャワーを浴びて着替えるとすぐに絵と向き合うように座る。そして一つずつじっくりと観察し始めた。

「探偵は全ての知識があるわけじゃない。私に絵の知識がないことをエミリー嬢も気付いているはずだ。なのに絵を謎解きに使用した。ということは、絵の知識がほとんどなくても解けるということ」

考えを口にしながら絵を見つめる。女性の絵、湖の絵、花束の絵ーーー。見つめているうちに、レオンハルトはある疑問が頭に浮かび始める。

(ん?この絵、おかしいな……)

一つの絵をレオンハルトは椅子から立ち上がり、じっくりと観察する。それは着飾った女性の絵だった。他の二枚の絵は絵の具の塗り方が右上から左下にかけて塗られている。しかし、この絵だけ左上から右下に塗られている。さらに顔の輪郭線が右に膨らんでいる。

(この絵の女性は右向き……。しかし、エミリー・ストーン嬢が描く人物画は左向きの絵ばかりだったはず。それに女性の左手が横ではなく縦。右手は縦ではなく横か)

晩餐会の部屋で見た時は美しいと思えた女性の絵は、全体的に左側に流れるような絵だということがわかった。レオンハルトは顎に手を当て、さらに思案していく。