響け！猛毒のグラーヴェ

エミリーが女性を怒鳴り付ける。女性は肩をびくりと大きく動かした。その目には涙が滲んでいる。レオンハルトが椅子から立ちあがろうとしたその時、マルティンが女性を隠すように前に立った。

「エミリー様、お客様の前です」

「何よ。使用人の分際で指図するつもり？」

「紅茶が冷めてしまいます」

淡々とマルティンは言い、エミリーのカップに紅茶を注ぐ。エミリーはマルティンを睨み付けたまま紅茶を口にした。そして次の瞬間、紅茶を運んできた女性に向かって投げ付ける。女性の顔とマルティンの顔が真っ青になった。

「おい！！」

アントーニョが声を上げ、レオンハルトは杖を取り出して「ウーア！」と呪文を唱える。女性目掛けて飛んでいった紅茶とティーカップが空中で停止した。紅茶からは湯気が出ている。肌にかかれば火傷を負っていただろう。

「エミリー嬢。何故このようなことを？」

「あんた、最低だ」

レオンハルトとアントーニョは冷たい目をエミリーに向ける。彼女の顔は真っ赤に染まった。