響け!猛毒のグラーヴェ

エミリーが自分を呼び出した理由をレオンハルトが考えているうちに、馬車はビオロンセロへと到着していた。



エミリー・ストーンの住む屋敷はビオロンセロの田舎町にあった。森や田畑が広がる町は別荘として二週間ほど滞在するには良いだろう。しかし、住むとなれば少々不便そうだとレオンハルトは思った。

大きな三階建ての屋敷の前に馬車が止まる。セバスチャンがドアを開け、レオンハルトとアントーニョは屋敷の前へと降り立った。

「トーニョはこの辺りに住んでいたのか?」

「いや。俺が住んでいたのはもう少し南の方だ。だけど、この湿り気のある風は懐かしいな」

アントーニョが懐かしげに微笑む。どんな形であれ、生まれ育った町でなくとも、故郷の国に来れたのは嬉しいのだろう。レオンハルトも隣で微笑んだ。

「ジッキンゲン様、セルバンテス様、エミリー様の元までご案内致します。お二人のお荷物はゲストルームまで運ばせていただきますね」