響け！猛毒のグラーヴェ

「待たせてしまい、申し訳ありません」

「いえいえ。とんでもございません」

馬車の前でセバスチャンは待っていた。馬車の扉を開け、レオンハルトを乗せてから自分も乗り込む。アントーニョはすでに馬車の中にいた。居心地が悪そうにしている。

馬車がゆっくりと動き出し、宙に浮き上がる。あっという間にトロンペーテの街が見えなくなっていく。レオンハルトは窓の外を流れる景色を楽しむことにした。

ビオロンセロはトロンペーテから離れているため、列車を乗り継いで行くと二日以上かかってしまう。しかし空飛ぶ馬車ならば半日ほどで到着するだろう。レオンハルトは気になっていたことをセバスチャンに訊ねる。

「何故、エミリー嬢は私を招待したのでしょうか？」

「実は、私たちも詳しい事情は何も知らされておりません。ただ、トロンペーテ以外の国でも名前が挙がるほどの探偵ならば、私の屋敷に呼ぶ価値があると仰っていました」

晩餐会というのはカモフラージュで実は探偵の力を借りたい何かがあるのか。それとも、ただ有名な探偵に会ってみたいだけなのか。