響け!猛毒のグラーヴェ

レオンハルトは事務所の中へと戻る。事務所にはリズしかいない。オルハンとマーガレットはそれぞれ調査に出掛け、カナタは体調を崩して休んでいるためだ。

「レオンハルトさん!どうかされましたか?」

リズが駆け寄ってくる。レオンハルトは杖を取り出して呪文を唱えた。

「コーダ!」

杖の先に光が集まり、やがてそれは二つの手鏡となった。その一つをレオンハルトはリズに手渡す。彼女は不思議そうに首を傾げていた。

「レオンハルトさん、これは一体……」

「魔法の手鏡だ。これを使えば私と連絡を取り合うことができる。何か起こった時はすぐに知らせてほしい」

「承知致しました」

リズが頷く。レオンハルトはリズの頭を優しく撫でた。何故か、触れたいと思ったのである。

「レオンハルトさん……?」

リズは不思議そうに首を傾げる。レオンハルトはニコリと笑った。

「行ってくる」

「行ってらっしゃいませ」

リズのその一言で、レオンハルトの心が揺れる。その感情の名前に気付かぬまま、レオンハルトは事務所の外へと出た。