響け!猛毒のグラーヴェ

レオンハルトはリズの隣に並んだ。

「寮まで送るよ。こんな日でも女性が夜道を一人で歩くのはあまりよくない」

「あ、ありがとうございます」

リズが住んでいる寮へと歩き出す。そこに沈黙はなかった。リズは楽しそうにまた遊んでいた時のことを話す。レオンハルトは相槌を打ってそれを聞いていた。そして思う。

(彼女が大きな隠し事をしているようには思えないが……)

ルートヴィッヒの調べた情報を疑っているわけではない。しかし、リズはどう見ても普通の女の子である。レオンハルトは足を止めた。リズも不思議そうに立ち止まる。

「レオンハルトさん?」

「……君は一体誰なんだ?」

単刀直入にレオンハルトは訊ねる。リズは不思議そうに首を傾げた。

「私はリズ・ポッターです」

「リズ・ポッターはこの世に存在しない人物だと調べがついてる」

レオンハルトがそう言うと、リズな顔から表情が消えた。手が微かに震えており、動揺しているのがわかる。レオンハルトはリズに一歩近付いた。