そう言いながら、口の中にたまった泡を吐き出した。

口の中をゆすいで昨日と今日でたまるストレスも一緒に吐き出す。

「はあ」

一つため息をついてから、自分の両頬を手でパシッと挟んだ。

「頑張ろう」

そう呟いて洗面所を後にし、リビングへ入る。

「あら、絃ちゃんもう準備できちゃったの?早いわね~もう少し待ってね」

私を見た母はそう言って、慌ててリビングを飛び出していった。

キッチンに入り、いつも飲んでいる炭酸水をコップに注ぐ。

コップを持った私は特にやることもなく、ソファに座り炭酸水に口を付けた。

「お姉、男装して男のアイドルのオーディション受けるんだって?」

テレビゲームをしていた名緒が急に振り返ってそう言う。

「ぶっ‼」

名緒が急にそんなことを言うものだから、思わずコップの中に口に含んでいた炭酸水を噴き出してしまった。

「なんで……それ、を…!!!」

ゲホゲホとせき込み、涙目で名緒を睨みつけながらそう言う。

「え~、母さんとご飯の前にオーディションの話してじゃん。最近やろうとしてるマスターのオーディションって男性アイドルのオーディションだから……二人がお姉をマスター所属にさせないわけないしさ~………そういう経緯だよ」

名緒はあまり気に留めていないように、サラッと真顔でそう言った。

名緒って普通に感が鋭くて、それを言えば名衣も同じだ。

と、いうことは……。

私はチラリと名衣に視線を向ける。

名衣は私たち二人の会話が聞こえていたのか、じっとこちらを見つめていた。

「もちろんは私も気付いてたよ。ナオみたいに言おうとは思わなかったけどね」

名衣はニッコリと笑ってそう言った。

「やっぱりかぁ~~」

私が声を漏らすと、二人が同時にクスクスと笑い声をあげる。

「まぁ、双子だし?」

「考えてることは時々一緒かな?」

二人はそう言うと顔を見合わせて、「ねーっ!」と声を合わせて言った。